グッバイ・ティラミス



「彼女さん、可愛いですね〜。」



喉の奥から振り絞って、精一杯の明るい声を出す。


実際、彼女さんは可愛い。

焦げ茶色の長い髪を、ゆるく巻いていて。清楚で女の子らしい、先生が好きそうな人。



「ちょっ、返せよ…!」



先生、否定しないし。
慌ててるし。敬語抜けてるし。


普段はポーカーフェースを保っているくせに、こんな時ばかり感情を外に出すなんて、ずるい。



まるで、彼女さんとの絆を、象徴してるみたい。



「へーぇ、先生こんな人が好みなんだ〜!」



写真を奪おうと伸ばしてきた先生の手を、スルリと交わした。
それに対応できず、ずるっと体制を崩した先生の焦り具合は異常。


こんなの、「これは彼女とのツーショットです」って、公言してるようなものじゃんね。




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