グッバイ・ティラミス
「お願いだ!」
先生が私の唇から手を放し、私の目の前で頭を下げた。
「このことは、周りには秘密にしてくれ。」
「……。」
なにそれ。
敬語なんかもう既に形までなくなっていて。先生は目の前で、彼女さんのために、中村先生のために、生徒に頭を下げていて。
滑稽だよ。
生徒に頭を下げるなんて、格好悪いよ。
格好悪いとか気にならなくなってしまうくらい、中村先生のためを想って行動していて。
そんな風に思われている中村先生が、ずるいよ。
「…じゃあ、」
ーーバラしても、いいんじゃない?
先生にそこまで優しくしてあげる義理は、私にはないし。このままじゃ、気持ちの持っていく場所がわからないし。
これは先生のミスなんだから、私がうっかり他の生徒に話しても、誰も私には文句を言わないだろう。
「…、毎週、金曜日。」
「えっ??」
彼女さんがいることを、知った。
もう私の出る幕はないことも、わかってる。
でも、私の心は素直だった。