グッバイ・ティラミス



先生、もしかして、私との約束忘れてるんじゃないかな。

忘れっぽい先生だもん。
あり得る。


こんなことなら、授業のあとにでも先生に一声かけておけばよかったかもしれない。



「……。」


…まだ、なのかな。



「……。」



まだ、こないの?



変な表現かもしれないけど、物音ひとつしない、この英語科準備室で

私ひとり、取り残された気分。



…ひとりは、キライ。



「ーー望月!ごめんごめん!
遅くなった!」



そう思った瞬間、ガラッと。
英語科準備室の扉が開いた。


「……っ。」
「ちょっと、用が入っちゃって…。」


慌てたように入ってきた先生は、息を小さく取り乱していて。


先生の息づかい
扉が閉まる音
開いた隙間からこぼれる生徒たちの笑声



途端に色んな「音」が、色鮮やかに英語科準備室に入ってくる。




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