グッバイ・ティラミス
「…そうですね。」
ふわっ、と。
先生が笑った。
予想外の反応に顔をあげたら、先生は子どもみたいに無邪気に笑っていた。
まるで、「先生」じゃないみたいだった。
「確かに、望月に隠したってしょうもないですもんね。」
「……。」
「もうばれちゃったんだし。」
まるで面白いイタズラを思いついたときの少年のように、先生は楽しそうに笑う。
その表情は、「先生」と「男の人」のどちらでもないような気がして。
言うならば、プライベートの先生を覗き見したような気分で。
「先生」ではない時の先生って、こんな風に笑うんだって、思った。
「別に上手く行ってるわけでも、行ってないわけでもないよ。」
「…。」
「ただアイツ、鈍臭いからさ。
この前なんて家の鍵なくしたりして。たまに、しっかりしろよとは思うよ。」
「……っ。」
愚痴が、
「中村先生が愛しくてたまらない」
…そんな風に聞こえたのは私だけだろうか。