グッバイ・ティラミス
中村先生の、こういうところがキライだなって思う。
自分の行動をいちいち確認するような、周りの目だけを気にして行動してるような、媚びたような目がキライ。
別に悪いことなんかしてないんだから、堂々としてればいいのに。
憶えたように私にシャーペンを差し出してくる中村先生の手を触らないように、私はシャーペンを受け取った。
「……。」
ーーありがとう、って言葉。
私の口からは、出てこなかったの。
中村先生のことを好きであろうと、キライであろうと、今はお礼を言うべきタイミングだったのに。
私の口は「ありがとう」って言葉を出そうとしなかった。
「……。」
素っ気なく会釈だけした私に、中村先生は困ったように微笑んで。
逃げるようにそそくさに、教卓の方へと戻っていく。
中村先生が去った瞬間、もう一度だけフワッと。甘ったるい香りが鼻をかすめた。