グッバイ・ティラミス



ーー本当は、知っていたの。


中村先生はみんながスルーした私のシャーペンを拾ってくれるくらいには、優しくて。

おどおどしながらも、決して困ってる人を見逃したりしない人。



ダメなところも目立つし、教師としてはどうかと思うけど、嫌な人じゃない。

先生が選んでしまうくらいには、可愛くて、女性らしくて、素敵な人なんだ。



私には、それが辛い。



「…授業続けます。」


教室を静かにすることを諦めた中村先生は、涙声になりながらも、授業を再開した。



…中村先生から優しさを受け取ってしまった私には、批判を正当化する材料がなくなって。


ポツリ


私の頭には、まる裸になった「嫉妬」という感情だけが、宙に浮いている。



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