グッバイ・ティラミス
自分の手のひらを真っ直ぐ上にかざしながら話す先生の薬指には、まだ指輪はついていない。
でも、その指に指輪がはまるのは、もうそろそろなのかもしれない。
中村先生の薬指にも、もうすぐ指輪がはまるかもしれない。
「あいつ、来週、誕生日だからさ。」
「……。」
「その時に言おうかなって、思って。」
そんなに楽しそうな表情しないでほしい。
子どものように、わくわくした顔つきで手のひらを見つめて。
それはまるで、クリスマス前日に今か今かとサンタさんを待ち焦がれる、子どもたちのように。
「別れたりはしないんですか。」
「ちょっと、望月。不吉なこと言わないでよ。」
最初から勝ち目なんかなかったんだ。
私が学校に入学したときから、…先生に出会ったときから、既に2人は始まっていた。