グッバイ・ティラミス
…なんで、
なんで、なっちゃんって、呼ぶの?
「やっとこっち向いてくれた。」
「……っ。」
……ずるい。
先生はわかっていたんだ。
こう呼べば私が振り向く、って。
視界の中に映った先生は、目尻をクシャクシャにしながら、子どもみたいに笑ってる。
先生のその笑顔は、なぜかとても優しく感じた。
「…なっちゃん、英語できるようになってきたよね。」
「なんなんですか、いきなり。」
なんとなく、その優しい笑顔を見ていられなくて、私は視線を外しながらぶっきらぼうに応える。
当たり前じゃん。
だって、頑張ったもん。
先生に質問しにいくために、先生に褒めてもらうために頑張ったんだよ。
先生の、自慢の生徒になりたかったんだよ。
「えらいじゃん。」
ーーえらい、なんて
そんな簡単な言葉で片付けないで。