グッバイ・ティラミス



「…中村先生は、英語できるんですか。」

「ん?アイツは全くできないよ。
数学しかやってないもん。」



そうだよね。
数学の先生だもん。



「なっちゃんの方が全然できると思う。」



…私が中村先生に、
唯一勝ってるところだ。




「…英語なんてできても意味ないもん…。」
「おいおい、そんな悲しいこと言うなよ。」



だって、中村先生は英語なんてできなくても、先生に好きになってもらえるじゃん。

英語なんてできても、意味ないじゃん。



「なっちゃんだって英語、受験で使うでしょ?」




ーー先生はこの日から、私のことを「なっちゃん」って呼ぶようになった。



「…うん。」



そりゃあ、みんなの前では、「なっちゃん」なんて呼ばないし、相変わらず2人の時以外は素っ気ないけど。

中村先生とは違う意味で「特別」だって、肌でわかるようになったのは、この時くらいからだったと思う。



「だから、」

「だから?」

「受験が終わるまで、私の面倒見てね。」



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