グッバイ・ティラミス
私はちゃんと、笑えているのかな。
痛々しいような、不自然な笑顔になっていなきゃいいけど。
このいつもとは違う空気に耐えられる自信がなくて、私は適当に質問を投げかける。
「先生、指輪買ったの?」
「買ったよ。ペアリング。
2人の誕生石が入ってるんだ。」
…最後の一文、聞いてないし。
知りたくもない、唐突な情報に耳を塞ぎたくなる。耳が痛い。
それでも、笑わなきゃ。
いつも通りに、接しなきゃ。
「へえ〜、すごい!
ケーキとかは用意したの?」
「うん、したよ。」
もう一度、ペンを手にもった。英語の長文に、目を通す。
先生が口を開いた。
「ティラミスに、したんだ。」