グッバイ・ティラミス
先生のニガテナモノ
先生は、ティラミスが苦手だと言いました。
聞くところによると、あの甘いのか苦いのかよくわからない、中途半端な味が気に入らないそうです。
その絶妙なバランスが、美味しいっていうのに。先生は、やっぱり、何もわかっていない。
ーーそれなのになんで、ティラミスにしたの?
…そう聞いてみたら。
先生は、中村先生がティラミスを大好きなのだと、言いました。
「なっちゃん。」
「……。」
「中村先生から、無事オッケーもらったよ。」
中村先生の誕生日である金曜日が過ぎ、それから初めての金曜日。
先生が英語科準備室に入ってからの第一声は、これだった。
「…私の前だし気にしなくていーから、中村先生のこと“ユミ”って呼べばいーのに。」
「あ、じゃあ、そうしようかな。」
わざと本題には何も触れないようにして。あえて、的外れなことを言ってみる。
そんな私の的外れな発言に、先生はナチュラルに受け応えをして。幸せオーラいっぱいで。
なんていうか、本当に「そうしようかな」なんて言っちゃう辺り、浮き足立ってるようだ。