グッバイ・ティラミス
そりゃあ、浮足立つよね。
大好きな人と、結婚することができる未来を手にいれたんだもん。
先生は、私がどんな想いでこの報告を聞いているかなんて、想像できるはずがないんだ。
「…なんで、入ってきて1番にいうことがそれなの?」
「え、だって嬉しいじゃん。」
おめでとうございます。
…なんて言葉、口から出てこなかったの。
視界に映った先生はすごい幸せそうな顔をしてるけど、歪んだ私のフィルターには、真っ黒な世界しか映っていない。
…ついに、現実になっちゃった。
先生と中村先生との未来が、決定的になってしまった。
得体のわからない何かが、ドバドバって私の心の中を侵食していく。
「なっちゃんには、1番に報告しておきたかったから。」
私、どうすればいいのか、わからなかった。
「……。」
先生の、高揚して熱帯びた顔。
いつもより大きめな声のボリュームに、スタッカートがついたように弾んだ声。
今まで見たことのないような先生の花が咲いたような表情が、真っ正面から視界に入って行く。
「…えっと、」
沈黙が不自然にならないように、言葉とも言えない言葉を、不自然に吐き出しておく。
やめて。
そんな顔で笑わないで。
そんな幸せそうな顔、しないで。
「…おめでとう、ございます。」
私にこんな言葉、言わせないでよ。