グッバイ・ティラミス



アホみたいじゃん。

自分の好きな人が自分ではない人と結婚するのを、祝うなんて。
私は先生ことが好きなのに、こんなのアホみたいじゃん。




“好きな人の幸せは、自分の幸せ”



…なんて、きっと嘘だ。




「ありがとう、なっちゃん。」



先生が笑う。
先生の笑顔は濁りなく、綺麗。

先生が幸せそうに笑う度に、私の心は暗く霞んでいく。




「幸せに、なってくださいね。」



ーー本当は、
そんなこと思ってなんかないよ。
幸せになんか、中村先生となるくらいなら、ならなければいいと思ってるよ。



私の心は、「先生の幸せ」じゃなくて、「私の幸せ」を願ってる。
私の恋は、どこまでも自分本位だ。



「うん、絶対なるよ。」




ーー幸せになんか、ならなければいい。



本当に先生が不幸になってしまうのは嫌だけど、ケンカばっかの夫婦になってしまえばいい。

他の人にすれば良かった、って思うようなことがある夫婦になってしまえばいい。



…そして、そういう時にあわよくば、
私の存在を、思い出せばいい。





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