グッバイ・ティラミス
変なの。
特別、にはなれたのに。
講習の当初の目的は達成できたはずなのに。
私、とてつもなく、泣きそう。
「うん、秘密。」
先生が、微笑み。
優しく、少しだけ茶目っ気を含ませて。
秘密って言葉が、先生の優しい目尻が、私を「特別」だと言っている。他の生徒と違うと言っている。
それだけで十分はずなのに。欲しかった先生の中での立ち位置になれたのに。なんでこんなにも、苦しいの。なんで、こんなにも泣きそうなの。
ひみつ
それはまるで、毒みたいだ。
「わかった。」
秘密という言葉が、私を先生に縛り付ける。
もう戻れないくらい先生を好きになってしまった私には、その言葉は甘すぎて。甘くて甘くて甘くて甘すぎて、私はまた、戻れなくなる。
中毒みたい。
「先生と私との、秘密ね。」
嬉しいのに、苦しい。
甘いのに、苦い。
好きな人との秘密だなんて、恋してる乙女からしたら、幸せの絶頂なはずなのに。
素直に喜べない。
嬉しいのに、素直に喜べない。