グッバイ・ティラミス
ジェラシー
この日、事件が起きました。
「静かにしてください…!」
今にも泣きそうに震える声で沈黙を促す中村先生に、聞く耳持たない男子生徒。
いつも通りの、数学の光景。
中村先生の指には、いつも通り指輪は光っていなかった。
私もいつも通り、騒ぐことも中村先生を助けることもせず、淡々と授業を受ける。
「お話するのを、やめてください…!」
正直、ざまあみろって思ってしまった。
ちょっとくらい、困ってしまえばいい。ちょっとくらい、生徒に嫌われればいい。
先生と結婚できる幸せを持ってるんだから、ちょっとくらい、不幸になってしまえばいいんだ。
「あ、先生も話に入る?」
「……っ、」
馬鹿な男子は、中村先生をからかうかのように、ケラケラ笑う。
中村先生は唇をキュッと閉じて、怒りと怯えを混ぜたような表情でその男子生徒を見ていて。