グッバイ・ティラミス



「意味わかんない。」




…もう一度、

心の中で唱えた言葉が、唇の外へと滑り落ちて。



思った以上に響いてしまったその声に、中村先生の肩が誰よりもビクンと反応する。



「じゃあ、もっと強く注意すればいいじゃん。」

「……。」

「生徒の目なんか気にせず、教師らしく厳しく怒ればよかったじゃん。」



あぁ、どうしよう。
止まらない。


一度出てしまった言葉は、ブレーキをつけるのを忘れてしまったみたいで。言葉のミサイルがなくなるまで、ミサイルは発射し続ける。



「泣くなんて、ずるい。」

「……。」

「……中村先生は、ずるいよ。」



我ながら、最悪だなって思った。
我ながら、性格悪い。


確かに中村先生は気に入らないし、泣くのは変だし、ハッキリ言えばいいのにとは思うけど。


私、本当は、他の理由を知っている。
中村先生を攻撃したくなる、自分の中の気持ち、気づいてる。




「…ごめんなさい。」



……ねえ、


ごめんなさい、なんて言われてしまったら


なんて言えばいいか、わからないじゃない。




< 88 / 125 >

この作品をシェア

pagetop