グッバイ・ティラミス



中村先生は、何も知らない。


私と先生が金曜日に補習をしてることも、先生と仲がいいことも、…中村先生と先生が結婚するのを知っている、ってことも。



…私が先生のことを好き、ってことも、知らないから。



だから純粋に頭を下げてる。本気で私が中村先生の授業態度について怒ってるって思ってる。




「…別に。」



なんか、私の方が泣きそう。

ボロボロな顔で頭下げる中村先生を、直視することができなくて。出てきた言葉は、あまりにも素っ気なくて、中村先生を怯えさせるには十分で。


中村先生がごめんなさいって、もう一度頭を下げる。
もういいよ、って思う。
もうやめて、って思う。



違う。中村先生は悪くない。私が気に入らないのは、授業態度じゃない。違う。

ごめんなさい。



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