グッバイ・ティラミス
“好きな人の好きな人を好きになるって、難しいね”
そんなことを、なんとなく思った。
中村先生が泣き腫らした目で授業を再開した姿を見るたび、嫌悪感と罪悪感が混合したような、なんとも言えない気持ちになった。
私は好きな人の好きな人を、好きになれない。
「で、ここにYを代入して…、」
その日のそれからの授業は、今まで見たことがないくらい、静かだった。
得体の知れない緊張感が教室を充満していて、時々私をチラッと見てくる中村先生は私に怯えているようで。
「……。」
ティラミスを、食べたい。
こういう心がぐっちゃぐっちゃな日は、ティラミスを食べて忘れてしまいたい。
…今日、コンビニで買って帰ろう。
そんなこと思いながら、私は中村先生から視線を逸らした。