グッバイ・ティラミス



「あれでも一応、生徒一人一人のことを考えてるし。」

「……。」

「数学の授業がちょっとでもわかりやすくなるよう、工夫だってしてるんだよ。」




ーーそれを私に言って、どうするの?




「…知ってるよ。」



見ていればわかるもん。


あまり好きになれないし、顔色を伺うような視線はイライラするけれど、中村先生が嫌な人じゃないことも知っている。

授業はうるさくて誰も聞いてる人はいないけど、ちゃんと聞けばわかりやすい授業だってこともわかってる。



中村先生は不器用なだけであって、生徒にそれが伝わることはないけれど、生徒想いな人だってことも気づいてるよ。



「だからさ、なっちゃん。」

「……。」

「ゆみに優しくしてあげて。」



ねえ


やめてよ。






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