heart and cold~私には貴方だけ~【完】
「……お母さん……?」
そっと、静かに、この空間に響かないように声を発した。
ビクッと肩を震わせて、こっちを向いたお母さんは
「璃花?ごめんね…いきなり呼び出して」
にっこりしながら“びっくりしちゃったでしょ?”と続けた。
「うん……お父さんは、どうしたの?なんで病院のベッドで寝てるの?」
するとお母さんは、一瞬こわばった顔をして、すぐに柔らかい笑顔に戻った。
…?
「お父さんはね、ちょっと体が疲れちゃったみたいで、ここで休ませてもらってるの。大丈夫よ。」
そう言った…
お母さんは、そう言ってたの…
今思えばお母さんの笑顔はやつれていたし、
“大丈夫”なんて、あのときは何に対してなのかわからなかったけど、自分に言い聞かせていたんだ。