heart and cold~私には貴方だけ~【完】
「ただいま…」
疲れ切った顔で、夜中にお母さんは帰ってきた。
いつもはとっくに寝ている時間だけど、目を閉じる度お父さんの顔が浮かんで眠れなかった。
「………」
疲れた顔をして…お父さんがもういないのに、悲しくないの!?
悲しくないわけがない。
わかっているのに。
「璃花?」
フツフツと感情が高ぶって、訳の分からない複雑な気持ちが渦を巻き始めた。
ぁぁぁぁぁぁあああ!!!
声を出そうとして口を開くと、涙がこみ上げてきて、ガラガラと感情が崩れた。
「お母さん…あたしは…お父さんの最期を見たよ…」
すごく苛立っていたのに、崩れて残ったのは悲しみだけだった。
発した言葉はとても弱々しくて…
怒鳴って、怒って、暴れてしまいたいのに、心とは裏腹に出るのは嗚咽に混じった嘆きだけだった。
「…っ…ひっく…お父さんがね…ごめんって、あたしに謝ったの…うっ…独り立ちするまで、見守ってやれなくて、って…」
「璃花…」
「ぅう…ひっく…」
苦しい、悲しい、心が痛い。
お父さんの最期を思い出して
人が亡くなるという重さに負けそうで
自分が壊れてしまいそうで
お母さんの腕の中で泣きじゃくった。