heart and cold~私には貴方だけ~【完】
「………………かえり、たい、です。」
ここは学校、ここは学校、ここは学校、ここは学校…
はるき君となら嫌とは思わないけれど、ここは学校、“ここは!学校!”
だから、ここでは駄目。
「そっか。じゃ、帰ろう。」
そう言ってスッと離れた。
さっきよりあっさりと承諾されて不安になる。
傷つけてはいないだろうか。
はるき君の表情を窺うと、切なそうなような、複雑な微笑みが見えた。
入ってすぐの場所だったから、もう既にドアに手をかけている。
誤解されていたら嫌だ。
「あのね、」
これを言うのは恥ずかしいから、声も控えめになってしまう。
なんとか掴んだはるき君のブレザーの裾をジッと集中して見つめる。
「ただ帰りたいんじゃなくて…ここは学校だから、なんだからね。」
国語だったら0点の文章しか思いつかない。
はるき君は無言。
伝わらなかったのだろうか?
ふと、掴んだブレザーの裾が動いたから顔を上げると
チュッと唇に一瞬だけはるき君のそれが触れた。
「わかってるよ。でも、今ので俺は余計帰りたくなくなったよ。」
「えっ!」
「大丈夫。帰る帰る。」
優しい声音で微笑みながら空き教室を出て行く。
あたしはそれに続いた。