heart and cold~私には貴方だけ~【完】
───「…まぁ、その敬語の裏側も知れたし、」
さっきとは違った声色に驚いて、顔を上げた。
「裏表がある君を嫌ってしまったけれど、あの時君が言った通り、どちらも君なんだと今なら言えるよ。やっぱり君は、凄く素敵な人なんだ。」
柔らかく、あたしの目を見て微笑む彼の顔があった…
「そんなんじゃ…ない、けど…」
あまりに優しく微笑むから、目をそらしてしまった。
「…振っちゃったこと、実はちょっと悔やんでたりする」
少し照れ臭そうに言う上村君は少年の顔をしていて、なんだか可愛かった。
「ありがとう…」
心が温かくなる。
もしかしたら、彼があたしの春の温かな風になっていたかもしれなかったんだ…
あたしの口の両端が、自然と上を向いていく。