勇者34歳
なんで
殊更に家への情が薄いイルルが
家紋入りの服なんか着てたのか
不思議で仕方ない。

「え?あれうちの家紋?!オカンが暇潰しに刺繍したやつだったんだけど。」

犯人はツキヨさんか

悪気はなかったんだろうけど
とんだ置き土産だ。

「ぽこさんいつでも出発可能だけど。」

リーヴェがニヤニヤしながら俺に言う。

「じゃ、俺はこれで。」

マイルが片手をあげる。

「その馬車どうするんだ。」

俺もそれは気になる。

「ロゼの店から王都への出荷の馬車なんでこのまま行けますよ。」

なるほど。

巻き込むだけ巻き込んで
ここで別れるのは悪い気もするが
むしろ早く別れたほうがいいに違いない。

「世話になったな!じゃあな!」

無邪気な笑顔で手を振るイルル。

本人はこの笑顔だけで
得をしているとは思うまい…。

エクトプラズムを吐きそうだが、
俺もマイルにお礼を言わなきゃな。

「生きて帰ってきてくださいよぉ。」

そのつもりだ。
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