勇者34歳
あっさり餌付けされて
何がブシドーで誰がサムライだ。

「まあまあ勇者さん、そんなに怒らないでくださいよ。子供のうちはちゃんと食べないと。」

子供?!
こいつは29歳だぞ!かなりイイトシだぞ!
多分そう言って弁護してるオマエよりも年食ってるぞ!

呆れて若いヤツとイルルを見つめたが
無邪気に飯を頬張るイルルは
確かに子供にしか見えなかった…。

年齢の割に
無邪気すぎて気持ち悪いが
今重要なのはそこではない。

「ええと、昨日俺と一緒にいた男と、メガネでふわふわ髪のお嬢様は来てないですよね。」

「来てないな。」
「来てませんね。」

正規兵の声が野太いハーモニーを奏でた。
むさ苦しいが、仕方ない。

「リーヴェなら夕方来たけど、すぐ宿屋に戻ったぞ。」

そのときに戻ってこいよ
このバカタレ。

「まあまあ勇者殿、そうカリカリ怒るもんじゃありませんぜ。」

おっさんのほうが
ベーコンと焼き肉とキャベツを
柔らかいパンに巻いて渡してくれた。

うん、ウマイ。

…イルルのことを怒れなくなってしまったが
おいしかったのでヨシとする。

「偽物は、巡回ルートを避けてるみたいだから、晩飯時がチャンスってリーヴェが言ってたぞ。」

そういう理由か。

確かに正規兵は偽物の噂は聞いても
実際に姿を見た人がいなかったような。

ん?

晩飯時?

「つかぬことをお伺いしますが、皆さんが今召し上がっているのは…?」

「「晩飯。」」

今じゃん!

「ごちそうさまでした。ほらいくぞ。」

イルルの上着を掴んで詰所から出る。

「坊主!また来いよ〜!」

おっさんのほうが
丁寧に挨拶してくれてたから
また後でイルルを挨拶に来させよう。
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