勇者34歳
「お姫様はいらないってどういうことだ?」

イルルがやっと言葉を発した。

「それは旧プラーティーン王国が何故無くなったのかに関わってくるのぅ。」

ナターシャさんはイルルを見ると

「長くなるけど聞きたい?」

イルルは無言でうなずいた。

「プラーティーンは白金のことだのぅ。この自治区には鉱山がいっぱいある。」

ナターシャさんは
宿屋の壁に画鋲で貼られていた古地図を
剥がして持ってきた。

「しかしプラーティーン王国は小さい国。」

ナターシャさんは
古地図を机に広げ
プラーティーン王国を指さす。

確かに小さい国だ。

「軍事力が弱くて、どこからか沸いてくる魔族や魔物に太刀打ちできなくてのぅ。」

ナターシャさんは鉱山を指でなぞる。

「金、銀、白金、ミスリル、宝石の鉱山をひとつずつ献上し、正規軍、当時の騎士団を派遣してもらうことにした。」

「他国の領土に騎士団が踏み込むのは対外的にまずそうな。」

「リーヴェさんの言うとおりでのぅ。それは、イルルたちのシルティア王国の属国になることで解決したのじゃよ。」

ナターシャさんは紅茶を一口飲んだ。

「王族ではなくなることで、国民の安全な生活が守られるなら、ボクたちは王権なんていらない。それがボクの家族が出した結論。」

ナターシャさんは周りを見回した。

「だからボクは今はただの貴族の娘で、ただの治癒士なんだのぅ。」
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