勇者34歳
「でも未だに、民衆にとってはナターシャ姫なんですね。」

「そのようじゃのぅ。」

ナターシャさんは窓の外から
ハルシオンの町並みを見る。

正規軍が巡回する姿を見て
安心したような顔をした。

でも、ナターシャさんの表情は
すぐに曇ってしまう。

「この頃は山賊が出るようだのぅ。」

ナターシャさんはそう言うと
なんとも言えない顔をして
また紅茶を飲み始めた。



俺はもの悲しくなってしまった。

その時代においての状況はあると思う。

それでも
本来高貴な身分で
たくさんの民に愛されたナターシャさんが
普通の人になったのは悲しかった。

これも
魔界が荒れたことによる
弊害なのだろうか。

「はいはい、ボクの昔話はここまで。」

ナターシャさんが
ぱんぱんと手を叩いて
みんなに言った。

「他にもやることはあるんだからさっさと散りなさい。」

そう言うとナターシャさんは
部屋から出ていった。

イルルも、のろのろと部屋を出ていく。
リーヴェはイルルについていった。

部屋には
俺とレグナくんが残された。
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