勇者34歳
「迷子よね?さっきからあまり時間を置かずにこのへんをうろうろしてるでしょ?」

そうかもしれない。

何故
女言葉のお兄さんが
俺がうろうろしてるのを
ずっと見ていたのかわからず
戦慄する。

「おい、そんなに怯えるな。」

お兄さんはいきなり優しげな声で
俺に話しかける。

何故男のような話し方になったのかは
理解できない。

「オレだ。イルルのサカヅキの兄だ。」

「なんで…、」

女装しているんですか?

そう言おうとしたが手で口を塞がれた。

「山賊との戦争で手柄を立てようとしたのがバレてだな、罰として潜入捜査中だ。」

元々フタエマブタで
目鼻立ちがはっきりしているので
幸か不幸か
なかなか美女な顔立ちになっているけど
どうしても、否定できない骨太感がある。

「何の潜入操作をしたら女装しなきゃいけなくなるんですか?」

「聞かないでくれ。これはあくまで罰なんだ。」

イルルのサカヅキの兄は情けない声を出す。
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