♡祐雫の初恋♡
「慶志朗さん、婚期がございますのよ。
あなたの身勝手で、麗華さんと琳子さんを待たせるわけには、
参りませんわ」
母は、勿論、意見を曲げずに、慶志朗の説得を試みる。
「はい、重々承知しております」
慶志朗は、母の気持ちを察しつつも、意思を貫く覚悟でいた。
「慶志朗、
婚約の件は、会長夫妻も楽しみにしていらっしゃったことなので、
まずは明日にでも、お詫びに伺いなさい。
そして、もし、会長の許しが出なければ、潔く諦めなさい」
父は、何を言っても決心が変わらない慶志朗を持て余して、
祖父であれば、慶志朗を上手く治めてくれることに期待した。
「わたくしからも、お義母さまに反対するよう
お願い申し上げなくては……」
母は、慶志朗の気持ちが分からないとばかりに
首を横に振り、大きな溜息を吐いた。