♡祐雫の初恋♡

「慶志朗や、

 婆さまは一日も早く曾孫を抱きとうございます」

 祖母・千子(ゆきこ)は、お茶を出しながら、慶志朗を見詰めた。


「婆さま、ぼくは、ようやく二十一なのですから、

 結婚は、まだまだ先の話です。

 婆さまには長生きをしていただかなくては。


 どうして父上はご壮健なのに、

 ぼくの結婚を急ぐのでしょうか」

 慶志朗は、祖父母には、素直に自分の気持ちを打ち明けられた。

 祖父母の懐の深さは、慶志朗を安心の境地で、寛がせていた。
 

「竣太朗は、地道な性格だから、慶志朗の奔放さが恐ろしいのだろう。

 糸の切れた凧のように会社を見捨てて、

 どこかに行ってしまうのではないかと、不安に思っておるのだろう」

 

「見捨てて、どこに行くというのですか」

 
 慶志朗は、思ってもいなかった言葉に、驚きの声をあげる。

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