♡祐雫の初恋♡
「ぼくは、總大くんに譲りたいくらいです」
慶志朗は、即座に返答する。
「まぁ、慶志朗さん、欲のないこと」
「總大に譲るのか……」
祖父母は、慶志朗の欲のなさに呆れた声をあげた。
「ですが、父上の絶大なる意向には逆らえませんし、
それにおじいさまの期待にも逆らえません。
ぼくは、自由奔放なだけではなく、
将来の設計は、しっかりと考えているつもりです」
慶志朗は、熱意の籠った視線を祖父母へ向ける。
「でも、婚約解消は、竣太朗さんに
逆らっていらっしゃいましょう。
總大さんは、早々に相応しい御令嬢を婚約者として、
決めてございますのよ」
千子は、そつがない總大と許嫁の顔を思い出していた。
「確かに總大に相応しい娘ではあったな。
だが、慶志朗の場合は、もっと違う娘でなければ、
満足しないだろう。
麗華嬢や琳子嬢でも良いように思われるのだが……」
慶之丞は、麗華と琳子の顔を思い浮かべて、
(それ以上の娘となると、果たして何処の娘だろうか)
と想いを巡らせた。