♡祐雫の初恋♡
「ありがとうございます。琳子さん」
慶志朗は、琳子が涙を零して、
落胆するのではないかと慮っていたが、
奥床しい琳子の力強さを改めて感じた。
「こちらこそ、ありがとうございます。
これからもお目にかかった時には、気兼ねなく、
お声をおかけくださいませ。
どうぞご健勝で、
これからのご活躍をお祈り申し上げます」
琳子は、始終冷静で、穏やかな笑みを湛えて、
慶志朗との最後のお茶のじかんを楽しんでいた。
幼馴染の慶志朗に、麗華という許婚が現れて、
麗華が相手では敵わないと、
琳子は、素直に自分の立場を学習し、弁えてもいた。
「琳子さん、お邸まで送って参ります。
そして、ご両親に深くお詫びを申し上げます」
慶志朗は、今になって、
幼馴染の琳子の芯の強さに気が付くと同時に、
琳子の真髄を見ようともしなかった自身にも気が付く。
確かにこのまま結婚しては、祐雫が言うように、
哀しい結末になる気がした。