♡祐雫の初恋♡
「優祐さま、この問題でございます」
環の声で、優祐は、現実の世界に連れ戻された。
環の呼び方が「桜河さま」から「優祐さま」へ変わっていた。
優祐は、気付かずに設問へ頭を巡らせていたが、
書架の後ろで本を探す振りをしている祐雫は、すぐに気付いて、
(まぁ)
と呟いた。
(環さんって、大人しい性格と思ってございましたのに、
学園通りの皆がいる前で、優祐に堂々と声をおかけになるし、
馴れ馴れしく優祐さまなんて、名前でお呼びになるなんて、
結構大胆でございましたのね)
祐雫は、本の隙間から環の表情を覗った。
女子の間では見せない甘えを含んだ笑みを湛えている。
祐雫は、歯痒いような
優祐を取られたような
不思議な気分に陥っていた。