♡祐雫の初恋♡

 優祐は、座席に戻って鞄を持つと、祐雫と共に図書館を出た。


 環は、図書館の並木の陰から、

(いつも優祐さまの横には、祐雫さんが張り付いているのだから)

 と、仲良く並んで帰っていく優祐を熱い想いで見送ると同時に

 祐雫へは、嫉妬の視線を投げた。


 祐雫は、刺さるような痛みを感じて、後ろを振り返る。


「ごめんなさい、優祐。

 お邪魔をしてしまったようでございますね。

 環さんを送って差し上げなくてもよろしゅうございましたの」


 祐雫は、優祐と環の親近に戸惑いながらも、平静を装う。

 
「邪魔だなんて、そのように考えなくてもいいよ。
 
 数学の問題を教えていただけだから。

 それに家が反対方向なので、送っていく理由もないだろう」


 優祐は、祐雫と並んで歩きながら、祐雫の香りを嗅いでみる。

 祐雫からは不思議と香りがしなかった。


 ふと気がつくと、祐雫の表情が翳(かげ)っていることに気付く。


「藤澤さんって、

 呑み込みが早いので、ぼくが教えなくてもいいくらいだったよ」


 優祐は、環の恋心に全く気付いていなかった。

< 151 / 201 >

この作品をシェア

pagetop