♡祐雫の初恋♡
「祐雫、何だか元気がないね。
もしかして変な誤解をしているのでは」
二人は、桜河の土手沿いの道に出た。
祐雫は、先程から感じていた背後の刺さるような痛みから解放されて、
ほっと溜息を吐く。
「変な誤解とは、どのようなことでございますか」
祐雫は、声を荒げて優祐へ問いかけた。
「ほら、何だか怒っているじゃないか。
ぼくは、何も悪いことはしていないはずだよ。
祐雫は、繊細で傷付きやすいのだから、
勝手に誤解しないでほしいな」
優祐は、祐雫の額を小さく突いた。
「優祐が恋をしたからって、傷つきはいたしません」
祐雫は、こころを見透かされたことで、
尚更歯痒い気持ちに陥っていた。
今まで、姉のような気分で優祐を見下ろしていた祐雫だったが、
このところ優祐は、精神的な成長を見せ、
穏やかな優しさで、祐雫を包んでいるように感じられた。
「別に恋をしたわけではないけれど、
女子っていい香りだなぁと思って。
祐雫からは何故しないのか不思議だけれど」
優祐は、こころの疑問をそのまま言葉にした。
今まで同じ年の祐雫と毎日接しているので、
別段女子を意識することもなかった。
「私は、無味無臭で、女子ではないって、
おっしゃりたいのでございますか。
いつも一緒にいるので、
香りが同化しているからではございませんの」
祐雫は、激しく反論した。
「同化・・・・・・確かに双子だから、
ぼくには、祐雫の考えていることが、
手に取るように分かるものね」
優祐は、むきになった祐雫の顔をみつめて穏やかに答えた。