♡祐雫の初恋♡

「祐雫さん、何処へ行っても暑いので、

 しばらく日本庭園で涼みましょうか」

 慶志朗は、大きなお屋敷が続く白壁脇へ車を駐車した。


「はい。この近くに日本庭園がございますの」

 車を停めた辺りには、延々とした白壁が続いていた。


「ええ、すぐ近くです」

 慶志朗は、柔らかな微笑みを浮かべると、

 白壁の一角に開かれた四脚門の扉を開けた。


 門を潜ると、高い樹々の間に低木が植えられ、

 飛び石が庭の奥へと続いている。


 樹々に囲まれた庭は、ひんやりとした風が渡っていた。



「涼しいでしょう。

 夏は、この庭で涼むに限ります」

 慶志朗は、ひんやりとした風に一息吐く。

 
「どなたのお庭で、ございますの」

 祐雫が問いかけると同時に生け込みから声がした。

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