♡祐雫の初恋♡
「子どもの頃、よくここに上って、
天下を取った気分になって過ごしました」
慶志朗は、爽快な笑顔を青空へ向ける。
祐雫は、慶志朗を見上げて、その背後の太陽と同じ眩しさを感じる。
慶志朗は、祐雫にとって、太陽そのものに感じられた。
「まぁ、天下取りでございますか」
祐雫は、見晴らし台の手擦りに掴まって、涼風に身を任せる。
夏の暑さが治まり、黒髪とワンピースの裾が風に靡いて、
青空を飛んでいる気分を味わう。
それと同時に、慶志朗が天下取りの気分を味わったという
その少年時代を理解できる気持ちになっていた。