♡祐雫の初恋♡

「ここでしばらく、待ちましょう」

 踊り場の窓硝子には、大粒の雨が叩きつけられていた。
 

 屋外の庭師たちが、一目散に

 納屋の軒下へと走って行く姿が見えた。



 遠い雷鳴が稲光とともに近付いていた。



 慶志朗は、窓の外を見上げて、祐雫を抱き寄せる。

 慶志朗からは、おひさまの匂いがする。



「通り雨なので、すぐに治まるでしょう。

 祐雫さんと逢うと、雷によく遇いますね」

 慶志朗は、いたずらっぽい笑みを浮かべる。


 祐雫は

(このような雷の時にそのように冷静におっしゃられても……)

 と、窓辺ではなく、

 早く階下へ下りたい気持ちが逸(はや)っていた。

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