♡祐雫の初恋♡
慶志朗は、胸に抱(いだ)く祐雫の八重桜の香りをいっぱいに感じていた。
(あの夏と同じ桜の香りがする)
「これくらいの雷に怯えていては、世界中の財宝が奪われてしまいますよ」
慶志朗は、いたずらっぽい笑みを増して、胸に抱く祐雫を見下ろす。
祐雫が怖がる表情を楽しんでいた。
「嵩愿さまは、祐雫が雷嫌いということをご存じでございますのに、
意地悪にございます」
祐雫は、慶志朗の胸から顔を上げて、慶志朗を見つめる。
すぐ近くに慶志朗の顔があり、祐雫は、ドキッとする。
心臓の音が雷鳴と呼応して鳴り響いた。
祐雫には、雷鳴よりも自身の心臓音の大きさが
勝っているようで、気が気ではない。