♡祐雫の初恋♡
通り雨が去って、
硝子を通して、眩しい陽射しが射し込んで、二人を照らした。
慶志朗は、静かに祐雫を離す。
「家の中にいるのに祐雫さんは、雨に打たれたようですね」
慶志朗は、優しいまなざしを向け、
突然の口づけに驚いて、感動の涙を零す祐雫の頬を指で拭う。
祐雫は、瞬きをして、涙の輪が広がる視界の中の慶志朗を見上げた。
頭の中が、真っ白ではなく……
淡い桜色に染まり、何も言葉が出てこない。
「祐雫さん、ここから見る石庭が一番美しいのです。
嵩愿家の家紋の形が描かれているのが分かるでしょう」
慶志朗は、何事もなかったかのように、
石庭の話題に切り替えた。
祐雫は、夢見心地のまま、慶志朗の左腕に寄り添っていた。