♡祐雫の初恋♡

「森の妖精か……

 詩乃さんも上手い表現をしますね」


 慶志朗は、思わず微笑んでいた。



 テラスで本を読んでいた慶志朗は、ふと気配を感じて、

 森の中へ視線を向けた。

 その視線の先に、突如、祐雫が現れた。



 深緑の森を背景にして、祐雫の白いワンピースは、

 木漏れ日を集めて光り輝き、

 まさに森の妖精が飛翔しているかのように感じられた。


 風に揺れる翠(みどり)の黒髪は、

 森の樹木を映し込んでさやさやと靡いていた。


「白いワンピースが妖精の羽のようで、

 思わずお誘いしていました」


 慶志朗は、森の深緑色を湛えた祐雫の瞳に惹かれて、

 真っ直ぐに見つめる。

 
< 19 / 201 >

この作品をシェア

pagetop