♡祐雫の初恋♡
「深窓の令嬢なのですね」
慶志朗は、興味津々で、祐雫の顔をまじまじと見つめる。
「いいえ、そのようなことはございません。
ただ……」
慶志朗の大きな瞳で見つめられて、
祐雫は、頬を薄紅色に染めて俯く。
(ただ、勉学に勤しんでいた)とは言い難かった。
それとともに、
慶志朗のような素晴らしい御方と出逢えるのであれば、
晩餐会へ参会しなかったことを後悔していた。
「桜河電機の会長や社長は、可愛い祐雫さんを
人目に触れさせたくなかったのでしょう。
それとも、すでに許婚がいらっしゃるのですか」
慶志朗は、ゆったりとした微笑みを祐雫に投げかけた。
「いいえ、そのような御方はございません」
祐雫は、慌てて否定しながらも、
森の神秘的な時間の流れと、慶志朗の穏やかさに包まれて、
不思議な寛ぎを感じていた。