♡祐雫の初恋♡
慶志朗は、深窓の令嬢の素顔を堪能しつつ、
紅茶を飲みながら、
避暑地の森の樹々に纏わる楽しいはなしを語った。
慶志朗は、小学生の頃から、毎年のように避暑へ訪れているので、
避暑地の森に詳しかった。
「避暑地の森には、七色の風がそよいでいます。
七つの色が分かりますか」
慶志朗は、聡明な祐雫へ問いかける。
「空の青色と雲の白色、森の緑色、草花の赤色と黄色、空気の紫色、
それから……樹の茶色にございましょうか」
祐雫は、避暑地の森を見渡して、瞳に留まった色を応える。
こころの中では、
(慶志朗さまのシャツの白色、カーディガンの青色、ズボンの水色、
祐雫のこころの桃色を加えとうございます)
と、こころの中で呟いていた。
「空気の紫色ですか。面白い表現ですね。
七色の風は、避暑地の森の中では、毎日変わります。
それは、自身のこころの色ですね。
その瞬間に感じる色でもあります。
この森へ来ると、このテラスで、読書に耽り、森の風景を眺め、
飽きたら森を散策し、疲れたら戻ってきて、
お茶のじかんを楽しむ。
その繰り返しです」
慶志朗は、森の潤いのような瞳を祐雫へ向けて語る。
寛いだ気分の祐雫は、慶志朗のはなしに
うっとりと酔いしれていた。