♡祐雫の初恋♡
室内に入ると、雨の音が僅かに和らいで聞える。
「突然、降り出すので、驚きましたね。
危うく濡れるところでした」
慶志朗は、祐雫から手を離して、
硝子越しに雨雲を見上げる。
「夕立だから、すぐに止むでしょう。
雨が止んだら、東野邸の近くまで送って行きましょう」
慶志朗は、元気付けようと、しおらしい祐雫へ話しかける。
祐雫は、自分らしくない自分に気が動転していた。
今まで雷をこれほどまでに、怖いと感じたことはなかった。
祐雫は、唇を噛み締めて、
潤んだ瞳を慶志朗へ気付かれないように俯く。
慶志朗の前では、何故だか、甘えん坊な気分になってしまう
自分自身に困惑していた。
「はい」
祐雫は、声が震えて、返事をするのが精一杯だった。