♡祐雫の初恋♡

 室内に入ると、雨の音が僅かに和らいで聞える。


「突然、降り出すので、驚きましたね。

 危うく濡れるところでした」

 慶志朗は、祐雫から手を離して、

 硝子越しに雨雲を見上げる。


「夕立だから、すぐに止むでしょう。

 雨が止んだら、東野邸の近くまで送って行きましょう」


 慶志朗は、元気付けようと、しおらしい祐雫へ話しかける。


 祐雫は、自分らしくない自分に気が動転していた。

 今まで雷をこれほどまでに、怖いと感じたことはなかった。


 祐雫は、唇を噛み締めて、

 潤んだ瞳を慶志朗へ気付かれないように俯く。


 慶志朗の前では、何故だか、甘えん坊な気分になってしまう

 自分自身に困惑していた。


「はい」


 祐雫は、声が震えて、返事をするのが精一杯だった。

< 26 / 201 >

この作品をシェア

pagetop