♡祐雫の初恋♡
次第に空が明るくなるとともに、雨音が止み、
森には健やかな風が渡り、
小鳥のさえずりと蝉の声が戻ってきた。
「もう、大丈夫でしょう。
あまり遅くなると東野の方々が心配されるといけないので、
そろそろ送って行きましょう」
慶志朗は、硝子越しに空を見上げる。
軒先から、垂れる雨の雫が、雲から覗いた陽の光に煌めいた。
「ありがとうございます。
はじめてお会いしましたのに
大変失礼をいたしました。
誠に恐ろしゅうございました」
祐雫は、
(いつまでも、このままでいとうございます)
という衝動を押さえて、慶志朗の広い胸から顔を離すと、
深々とお辞儀をした。