♡祐雫の初恋♡
残り香
慶志朗は、東野邸の別荘が近付いた所で立ち止まると、
祐雫から手を離して、問いかけた。
「滞在は、いつまでですか」
慶志朗は、できれば明日もお茶の時間に、
祐雫を招待したいと考えていた。
「明日の午後には、お迎えが参ります」
祐雫は、別れがたく、立ち止まって、
慶志朗を瞳に焼き付けるように見上げる。
「じゃあ、これでお別れですね」
慶志朗は、こころの中に小さな空洞ができたような気持ちになった。
「はい。
嵩愿さま、本日は、素敵な時間を過ごさせていただきまして、
ありがとうございました。
とても楽しゅうございました」
祐雫は、名残惜しく切ない気持ちで、慶志朗を見つめる。
『じゃあ、これでお別れですね』
という慶志朗の言葉が胸に突き刺さっていた。