♡祐雫の初恋♡
「東野邸に滞在している桜河電機のお嬢さんのようです。
偶然に通りかかったので、お茶に招待しただけです。
突然の雷に動揺されていたので、
送って差し上げただけですから……。
この香りは、桜の香りでしょう。
一緒に居る時には気付かなかったけれど、
桜河のお嬢さんに相応しい香りですね」
慶志朗は、別荘の扉を開けた瞬間に桜の香りを感じていた。
今思えば、祐雫は、森に人知れず咲く
淡紅色の華やかな八重桜の雰囲気を
持ち合わせているように思えた。
夏の深緑の森で、八重桜に出逢うとは……
慶志朗は、祐雫の残り香を静かに抱きしめた。