♡祐雫の初恋♡
「祐嬢ちゃまは、空色の素朴なお召しものがお好みでございますが、
時には、可愛らしいワンピースを
お召しになられてはいかがでしょうか。
香(かおり)お嬢さまに劣らず、
お美しゅうございます。
是非とも避暑地でお召しくださいませ」
祐雫は、出来上がったワンピースを手渡してくれた時の
紫乃の言葉を思い出していた。
紫乃の厚意は、大変有り難く感じられたが、
なかなか袖を通す気分になれなかった。
久世香(くぜかおり)は、祐雫より三つ年上で、
生まれた時から花のように美しく、
その華麗さは群を抜いていた。
祐雫は、
(香お姉さまに太刀打ちできるはずがございません。
それに花びらのようなワンピースは、祐雫には似合いませんのに……)
と、こころの中で呟きつつ、
森の涼やかな空気の中へ歩を進める。