♡祐雫の初恋♡

「嵩愿さま……でございますか」


 祐里は、嵩愿慶志朗の壮麗な顔をすぐに思い出した。

 嵩愿家は、旧家でかつ経済界においても屈指の家柄である。


「嵩愿家のご長男で、時折、晩餐会にお見えになられますので、

 またお目にかかれることでしょう」


 祐里は、恋煩いの祐雫が愛おしくて抱きしめる。

 祐雫の初恋が、祐里には嬉しく感じられた。


「まぁ、お目にかかれるのでございますか」


 祐雫は、祐里の甘い胸の香りの中で、

 久しぶりにこころが嬉々として、瞳を輝かせた。

 
 祐里は、聡明な祐雫らしい選択だと思いつつも、

 天空海闊(てんくうかいかつ)な慶志朗と祐雫の相性を

 慮(おもんばか)っていた。


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