♡祐雫の初恋♡
森の小路を抜けると、緑の樹々が祐雫を取り巻いていた。
「静かで涼しくて、
まるで静謐を取り戻した神の森のようでございます」
祐雫は、深緑の森に神の森を重ねる。
神の森とは・・・
母・祐里(ゆうり)の父方の一族が守る鎮守の森である。
中学生の頃、曾祖父が母を訪ねてきた折、
神の森にひと月近く滞在していた双子の兄・優祐(ゆうすけ)は、
夏休みになると、毎年二週間程、神の森へ里帰りしていた。
祐雫も誘われるのだが、
祐雫にとっての神の森は、暑くて長かった神の森への道のりと
湖に落ちた時の心痛が思い起こされて、
躊躇するものがあった。
それでいて、優祐が神の森から戻り、
壮大な神の森での神秘的な楽しい出来事を聞かされると、
行かなかったことを後悔する気持ちになったものだった。